「どうせ無理」が口癖の子供へ。発達障害の「白黒思考」をほぐす親の声かけ術【認知の歪み対策】
オンライン家庭教師
オンライン家庭教師

学校のテストでたった1問、計算ミスをしただけなのに、「もう僕はバカだ! 勉強なんて意味がない! 死んだほうがいい!」と泣き叫び、教科書を壁に投げつける……。

そんなお子さんの姿を目の当たりにして、恐怖と無力感に震えていませんか?

「大丈夫だよ、次はできるよ」と優しく励ましても、「嘘つき! ママに僕の気持ちなんて分からない!」と逆に怒り出してしまう。

毎日のように繰り返されるこのやり取りに、「私の育て方が間違っていたのだろうか」「この子は一生、こうやって自分を傷つけ続けるのだろうか」と、お母さん自身が追い詰められてしまっているかもしれません。

どうか、ご自分を責めないでください。

お子さんのその極端な言葉は、性格のせいでも、わがままでもないのです。ましてや、お母さんの愛情不足でもありません。

それは、発達障害(特にASD傾向)のあるお子さんの脳内で起きている「認知の歪み(白黒思考)」という誤作動が言わせている言葉なのです。

この記事では、オンライン家庭教師WAMの教育プランナーとして、数多くの「生きづらさ」を抱える生徒たちと向き合ってきた経験から、お子さんの凝り固まった心をほぐし、自信を取り戻させるための「具体的な声かけ技術」をお伝えします。

精神論ではなく、脳の仕組みに基づいた「技術」を知ることで、親子で笑顔を取り戻す糸口が必ず見つかります。

なぜ、うちの子はこんなに極端なの?「認知の歪み」と発達障害の関係

「認知の歪み」と発達障害の関係を表している

まず知っていただきたいのは、お子さんが感じている世界の見え方です。

私たち大人が「まあ、そんなこともあるよね」と受け流せるような小さな失敗が、彼らには「世界の終わり」のように見えています。これは比喩ではなく、脳の情報処理における「認知の歪み」という現象です。

「認知の歪み」とは?

認知の歪み(Cognitive Distortion)とは、物事を事実よりも極端にネガティブに捉えてしまう思考の癖のことです。

誰にでもあるものですが、ASD(自閉スペクトラム症)の特性を持つお子さんは、認知の歪みが極端に強くなる傾向が顕著に表れやすいという関係性があります。

ASDのお子さんは「想像力」の働かせ方に特異性があり、見通しが立たないことへの不安や、独自のこだわり(マイルール)が非常に強い傾向があります。

このASD特有の「融通の利かなさ」が、認知の歪みの一種である「白黒思考(全か無か思考)」を増幅させてしまうのです。

  • 白黒思考(All-or-Nothing Thinking): 「100点でなければ0点と同じ」「一度失敗したら、僕は完全な敗北者だ」という極端な二分法。
  • 過度の一般化: 一つのミスを見て「僕はいつも失敗ばかりする」「誰も僕を愛していない」と決めつける。

お子さんがパニックになるのは、わがままだからではありません。

歪んだレンズを通して、「失敗=自分の存在価値の消滅」という強烈な恐怖を感じ、必死に自分を守ろうとして防衛反応(癇癪)を起こしているのです。

✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス

【結論】: お子さんが極端なことを言った時は、「また始まった」と呆れるのではなく、「今、脳がパニックを起こしてSOSを出しているんだ」と翻訳して受け止めてあげてください。

なぜなら、多くの保護者様が「性格の問題」と捉えて「矯正」しようとしてしまいますが、これは「脳の機能的な特性」だからです。

視力が悪い子に「気合で見ろ」と言っても無理なように、思考の癖も精神論では治りません。まずは「そういう仕組みなんだ」と理解することが、解決への第一歩です。

良かれと思った「励まし」が逆効果?ASDタイプにやってはいけない対応

「自分はダメだ」と泣く我が子に対し、親として何とかしてあげたいと思うのは当然です。

放置すれば、失敗体験の蓄積により「何をしても無駄だ」と感じる学習性無力感に陥るリスクもあるからです。

しかし、ここで多くの親御さんが陥ってしまう「良かれと思った対応」が、実はASDタイプのお子さんには逆効果になっているケースが非常に多いのです。

なぜ「共感」が通じないのか?

一般的な育児書には「まずは共感しましょう」と書かれています。しかし、論理性を重視するASDのお子さんにとって、根拠のない情緒的な共感は「嘘」と捉えられるという致命的なすれ違いが発生します。

例えば、明らかにテストで間違えているのに「大丈夫、頑張ったよ」と言われると、お子さんはこう思います。

  • 事実: 間違えた(=ダメだった)。
  • 親の言葉: 大丈夫(=事実と違う)。
  • 結論: 「ママは僕を慰めるために嘘をついている! 僕の絶望なんて分かってないくせに!」

このように、事実に基づかない「情緒的共感」と、事実(0か100か)にこだわる「ASD児」は対立構造になりやすいのです。

📊 比較表:ASDタイプのお子さんへのNG対応 vs OK対応

シチュエーション ❌ 多くの親がやりがちなNG対応(火に油) ⭕️ 脳の特性に合わせたOK対応(鎮火)
パニック中

(泣き叫んでいる時)
「説得」しようとする

「そんなことないよ」「落ち着いて聞いて」と必死に話しかける。

👉 脳がオーバーヒートしており、言葉は一切届きません。刺激が増えてパニックが悪化します。
「刺激遮断」と「クールダウン」

何も言わずに安全を確保し、静かな部屋で落ち着くまで待つ。

👉 まずは脳の興奮(扁桃体の暴走)を物理的に鎮めることが最優先です。
否定的な発言

(「僕はバカだ」)
「否定」や「感情的な共感」

「バカじゃないよ!」「辛いよね」

👉 「事実は失敗したのに、なぜ嘘をつくの?」と不信感を抱かせます。
「事実確認」と「質問」

「どうしてそう思ったの?」「どの部分がバカだと思った?」

👉 感情ではなく事実にフォーカスし、論理的に対話します。
慰め方 抽象的な励まし

「次は頑張ればいいよ」「元気出して」

👉 「次っていつ?」「どう頑張ればいいの?」と見通しが立たず不安になります。
具体的な分析

「計算のここが惜しかったね。次はここに線を引けば解けるよ」

👉 「どうすれば成功するか」の具体的な手順(Evidence)を示すことで安心します。

親子でできる「認知の歪み」修正トレーニング:3つのステップ

では、具体的にお家でどう接すればいいのでしょうか?

ここでお伝えするのは、WAMの指導現場でも実践している「問題の外在化(Externalization)」と「反証探し」を組み合わせたテクニックです。

ポイントは、「お子さん自身を責めるのではなく、お子さんを苦しめる『思考の癖』を悪者にする」ことです。これを親子でゲーム感覚でやってみましょう。

「問題の外在化(Externalization)」と「反証探し」のイメージ

Step 1: 外在化(モンスターのせいにする)

お子さんが自暴自棄になったら、こう声をかけてみてください。

「あ! またあなたの頭の中に『白黒思考モンスター』が出てきたね! こいつ、また意地悪なことを吹き込んでるんじゃない?」

問題の外在化を行うことで、お子さんは「自分がダメな人間なんだ」という自己否定から、「モンスターが僕を騙そうとしている」という構図へ意識を切り替えることができます。

これなら、プライドの高いお子さんでも「敵は自分じゃない」ので、親の言葉に耳を貸しやすくなります。

Step 2: 魔法の言葉「証拠はある?」

次に、ソクラテス式問答法を使って、モンスターの嘘を暴きます。

「僕はバカだ!」と言ったら、冷静に聞いてみてください。

「なるほど、モンスターはそう言ってるんだね。じゃあ、本当にそうか裁判をしよう。

あなたが『バカだという証拠』はある? 逆に、先週のテストで80点取れた『バカじゃない証拠』はない?」

感情的な共感ではなく、探偵のように「証拠(反証)」を一緒に探すのです。

過去の成功体験という「事実」を並べられると、論理的な彼らは「確かに、100%バカというのは間違いだ」と認めざるを得なくなります。

Step 3: リフレーミング(視点の書き換え)

最後に、事実に基づいて言葉を修正します。

「テストでミスをした」という事実は変わりませんが、その解釈を変えるのです。

「『僕はバカだ』じゃなくて、『僕は計算ミスを1つした。でも文章題はできた』。これが事実だよね?」

これを繰り返すことで、0か100かの間に「60点でもいい部分はある」「失敗は修正できる」という「グレーゾーン」が存在することを、脳に学習させていきます。

勉強中に「もう嫌だ!」となったら?WAM流・自信を取り戻す関わり方

勉強は、最も「できないこと」が可視化されやすく、認知の歪みが発動しやすい場面です。

親御さんが勉強を見ると、どうしても「なんでこんな簡単なことができないの!」と感情的になり、お子さんも「ママはうるさい!」と甘えが出てしまい、泥沼化しがちです。

そんな時は、親子関係のこじれを防ぐために、家庭教師のような第三者のプロを頼ることも重要な選択肢です。

私たちWAMの講師は、保護者様とお子さんの間に入り、感情的な衝突の緩衝材(クッション)になります。

WAMの指導では、いきなり難しい問題は解かせません。

「スモールステップ法」を徹底し、「これなら絶対に解ける」というレベルから始めます。

「できた!」という事実を99個積み重ねてから、1つの挑戦をする。

この圧倒的な「成功の証拠」の積み上げこそが、「どうせ無理」という認知の歪みを溶かす最強の特効薬なのです。

まとめ:「白黒思考」は強みにもなる。焦らずゆっくり「グレー」を教えよう

「白黒思考」は、決して悪いことばかりではありません。

それは裏を返せば、「妥協を許さない真面目さ」「一つのことを突き詰める集中力」という素晴らしい才能の裏返しでもあります。

将来、その特性が研究者や職人としての大きな強みになることも十分にあり得るのです。

だからこそ、お母さん。

「治さなきゃ」と焦る必要はありません。

ただ今は、その鋭すぎる刃でお子さん自身が傷つかないように、「まあいいか」「60点でも合格」という「グレーの緩衝材」を、親子で一枚ずつ挟んでいく練習をしていけばいいのです。

もし、ご家庭だけで向き合うのが苦しくなったら、いつでも私たちWAMに声をかけてください。

お子さんのその激しさも、繊細さも、すべて受け止めて、一緒に「自信」へと変えていくお手伝いをさせていただきます。

お子さんの「極端な思い込み」に悩んでいませんか?

オンライン家庭教師WAMでは、発達障害やグレーゾーンのお子さん一人ひとりの特性に合わせた、オーダーメイドの学習プランをご提案します。

「勉強が嫌い」「自信がない」というお子さんこそ、私たちにお任せください。まずは無料の教育相談で、お悩みをお聞かせいただけませんか?

記事一覧TOP