算数から数学へ変わる本当の理由とは?「計算は得意」な子が中学でつまずく原因と対策
「うちの子、カラーテストはいつも80点以上だし、計算も早いから中学の数学も大丈夫よね?」
そう思っていた矢先、中学校にお子さんが通っている先輩ママから「数学に入った途端、急に点数が取れなくなる子が多いよ。特に『負の数』とかでつまずくと大変」なんて話を聞いて、急に不安になっていませんか?
実は、先輩ママの話を聞いて抱いたその不安は、決して間違いではありません。私たちが多くの生徒さんを見てきた経験から言えるのは、中学数学で一番苦労するのは、意外にも「小学校の計算テストは得意だった子」なのです。
「算数」から「数学」への変化は、単なる教科名の変更ではありません。求められる能力が「答えを出す力」から「なぜそうなるか説明する力」へと、質的に大きく転換するからです。
この記事では、WAMの教育プランナーが、算数と数学の決定的な違いを解説し、入学前にお家でできる「数学脳」の育て方をご紹介します。親御さんが数学を教える必要はありません。今日から「会話の仕方」を少し変えるだけで、お子さんを「隠れつまずき」から守ることができますよ。
Contents
なぜ名前が変わる?「算数」と「数学」の決定的な違い
そもそも、なぜ中学校に入ると「算数」から「数学」へと呼び名が変わるのでしょうか。この理由を正しく理解することは、お子さんが直面する学習の変化をサポートするための第一歩です。
結論から申し上げますと、算数は「日常生活のための道具」であり、数学は「世の中の事象を説明するための学問」であるという明確な違いがあります。
「具体的な数」から「抽象的な概念」へ
小学校の算数(Arithmetic)では、基本的に「目に見える具体的な数」を扱います。「リンゴが3個あります」といった具体的な状況で、正確に計算し、正しい答えを出すことがゴールとされます。つまり、生活に必要な計算スキルを身につけることが主な目的です。
一方、中学校からの数学(Mathematics)では、数字の代わりに x や $y$ といった文字を使ったり、目に見えない「マイナス(負の数)」を扱ったりします。これは、具体的な一つの事例だけでなく、どんな数字が入っても成り立つ一般的なルール(概念)を考えるためです。
この「算数(具体)」から「数学(抽象)」への進化こそが、多くのお子さんが戸惑う最大の壁です。具体的なイメージが湧きにくい世界で、論理的に物事を考える力が求められるようになるのです。
要注意!「計算はできるのに数学が苦手」になる子の共通点
「うちの子は計算が得意だから大丈夫」
そう安心されている親御さんにこそ、知っていただきたい事実があります。実は、計算力があることと、数学的な概念理解ができていることは別物なのです。
「意味もわからず公式に当てはめる」ことの危険性
私が指導現場でよく目にするのが、小学校のテストでは高得点だったのに、中1の「文字式」や「方程式」で急激に成績が下がってしまうケースです。
このようなお子さんによく見られる共通点は、公式や解き方を「呪文」のように丸暗記してしまっていることです。
例えば、「速さ」の問題で「『き・は・じ』の図に数字を入れれば解ける」と教えられ、その通りにやっているだけのお子さんは危険です。なぜなら、数学の世界に入ると、「なぜそこで割り算をするのか?」という理屈(概念理解)がわかっていないと、文字式を使って式を立てることができなくなるからです。
計算力はあくまで数学を解くための「基礎体力」であり、実際に問題を解くための「思考力」ではないということを、ぜひ心に留めておいてください。
✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス
【結論】: お子さんが宿題をしている時、「答え」ではなく「途中式」を書いているか確認してください。
なぜなら、多くの人が見落としがちですが、途中式を書かない(書けない)ことは、思考のプロセスが整理できていない証拠だからです。数学では、答えが合っていても論理が間違っていれば評価されません。「面倒くさい」と言って途中式を省略する癖は、中1の「負の数」の計算で符号ミス(プラス・マイナスの間違い)を連発する最大の原因になります。今から「途中式は思考の足跡だよ」と伝えてあげてください。
中学入学前にやっておきたい!数学脳を育てる「親子の会話術」
「じゃあ、親として何をしてあげればいいの? 私も数学は苦手で教えられないし…」
ご安心ください。親御さんが先生になって数学を教える必要は全くありません。むしろ、親御さんは「聞き役」に徹することで、お子さんの数学脳を劇的に育てることができます。
ここでご紹介するのは、教育現場でも効果が高い「リバース・ティーチング(反転授業)」という手法を家庭に応用したものです。
「教える」のではなく「説明してもらう」
方法はとてもシンプルです。お子さんが解いた問題について、「これ、どうやって解いたの? お母さんに教えて?」と質問するだけです。
自分の言葉で解き方を説明する(言語化する)ためには、頭の中で情報を整理し、論理立てて話す必要があります。このプロセスこそが、数学に必要な「論理的思考力」を鍛える最強のトレーニングになります。
たとえお子さんの説明がたどたどしくても、「なるほど、ここでこの数字を使うんだね!」と聞いてあげてください。親御さんが数学を理解している必要はありません。「説明しようとする姿勢」を引き出すことがゴールです。親が教えようとして喧嘩になるストレスからも解放され、一石二鳥ですよ。
プロが教える「算数から数学への架け橋」チェックリスト
最後に、中学入学前(春休みなど)に、ピンポイントで復習しておくべき単元をお伝えします。算数の全範囲を復習する必要はありません。
中学校の数学、特に中1の学習内容に直結するのは、小5の「割合」と小6の「速さ」の2つです。
この2単元は、抽象的な概念理解(x や $y$ の考え方)の基礎となるため、ここが曖昧なままだと、中1の方程式の文章題で必ずつまずきます。
以下のチェックリストを使って、お子さんの理解度を確認してみてください。
中学準備のための「割合・速さ」理解度チェック
| 単元 | チェック項目 | 親御さんからの質問例 |
|---|---|---|
| 割合 (%) | □ 「もとにする量」と「比べられる量」の違いを言える | 「消費税10%って、元の値段に何をかければいいの?」 |
| 割合 (%) | □ 文章を読んで、線分図などの図が書ける | 「この文章を絵(図)にしてみて?」 |
| 速さ | □ 「時速」の意味を言葉で説明できる | 「時速40kmって、どういう意味?」 |
| 速さ | □ 公式に頼らず、比の感覚で考えられる | 「時速60kmで走ったら、30分で何km進む?」 |
もし、これらを言葉で説明できない(公式だけで解いている)場合は、春休みの間にこの2単元だけでもしっかりと「意味」から復習しておくことを強くお勧めします。
「解き方」より「考え方」を。正しい準備で中学数学は怖くない
算数から数学への変化は、お子さんの思考力が「大人の思考」へと成長するための大切なステップです。
「難しくなるから大変」と怖がる必要はありません。むしろ、「どうしてそうなるのか?」という論理的な面白さに出会えるチャンスでもあります。
今日からお家で、「答え」の正解不正解だけでなく、「どう考えたの?」というプロセスに目を向けてあげてください。
親御さんのその一言が、お子さんの「考える力」を伸ばし、中学数学への不安を自信へと変える一番の特効薬になります。
もし、「家で親が聞くと喧嘩になってしまう」「どこまで戻って復習すればいいかわからない」という場合は、プロの手を借りるのも一つの賢い選択です。
オンライン家庭教師WAMでは、お子さん一人ひとりの「隠れつまずき」を発見し、中学入学に向けた最適なカリキュラムをご提案する「無料学習相談」や「実力診断テスト」を実施しています。
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