「書いて覚えなさい」はもう終わり。脳タイプ別・小学生の「書かない」暗記術
「なんでこんなに書いているのに、全然覚えられないの!」
昨日、漢字ドリルに向かうお子さんの背中に、思わずそんな言葉を投げつけてしまいませんでしたか?
泣きじゃくりながら鉛筆を動かす我が子を見て、寝顔に「ごめんね」と謝った夜を過ごしているお母さん。
もう、自分を責めないでください。
そして、お子さんを責めるのも、今日で終わりにしましょう。
お子さんが漢字や単語を覚えられないのは、努力が足りないからでも、お母さんの教え方が悪いからでもありません。ただ、「脳の入力端子」が「書くこと」に向いていないだけなのです。
これは、視力が悪いのに、度の合わない眼鏡をかけさせて「もっとよく見ろ!」と言っているのと同じ状態です。
脳のタイプ(認知特性)に合った「魔法の眼鏡」に変えるだけで、苦痛だった暗記が「才能を活かすゲーム」に変わる瞬間を、私は何度も見てきました。
この記事では、WAMの指導現場で実績のある「タイプ別・書かない暗記術」と、多くの親御さんが悩む「学校の宿題への対処法」を公開します。今日から、親子で笑顔を取り戻しましょう。
Contents
なぜ、うちの子は「何度書いても」覚えられないのか?
まず、一番大切な誤解を解きましょう。「書いて覚える」ことは、万人に共通する正解ではありません。
むしろ、特定の脳タイプのお子さんにとっては、「書くこと」自体が記憶の邪魔(ノイズ)になっている科学的な理由があるのです。
「書く」作業は、脳にとって高度なマルチタスク
私たち大人は無意識に行っていますが、「文字を書く」という行為は、脳にとって非常に複雑なプロセスです。
- 文字の形を脳内で思い出す(想起)
- 筆順やバランスを考える(空間認知)
- 指先の筋肉を微調整して鉛筆を動かす(運動制御)
これらを同時に行いながら、さらに「文字の意味」まで記憶しようとするのは、まさに高度なマルチタスクです。
視覚優位タイプには「書字」がノイズになる
特に、目で見た情報を映像として処理するのが得意な「視覚優位(カメラアイ)」の特性を持つお子さんの場合、このミスマッチは深刻です。
彼らの脳は、カメラのシャッターを切るように、完成された文字の形を一瞬で捉える能力を持っています。
しかし、そこに「ちまちまと線を引く」「何度も同じ動作を繰り返す」という運動プロセスが加わると、せっかく捉えた鮮明な映像がブレてしまったり、書く作業に脳のメモリ(ワーキングメモリ)を使い果たしてしまったりするのです。
視覚優位のお子さんにとって、単純な書字作業は脳のメモリを浪費する相性の悪い作業と言えます。
実際、私が担当したある生徒さんは、毎日ノート2ページ分の書き取りをしていましたが、漢字テストはいつも10点台でした。
しかし、「書くのをやめて、見るだけにしよう」と提案したところ、わずか2週間で90点を取るようになったのです。
【3分で診断】あなたの子供はどのタイプ?3つの認知特性
では、あなたのお子さんはどのタイプなのでしょうか? 認知特性は主に「視覚優位」「言語優位」「聴覚優位」の3つに分類されます。これは優劣ではなく、生まれ持った「脳の個性」です。
以下のリストをチェックして、お子さんの日常行動に当てはまるものが多いタイプを探してみてください。
| タイプ | 特徴的な行動パターン | 口癖の傾向 |
|---|---|---|
| 👀 視覚優位 (カメラタイプ・3Dタイプ) |
|
「あれ」「それ」「こんな感じ」 (指示語が多い) |
| 💬 言語優位 (ファンタジー・辞書タイプ) |
|
「つまり」「要するに」 (論理的な接続詞) |
| 👂 聴覚優位 (ラジオ・サウンドタイプ) |
|
「ガーッと」「バーンと」 (擬音語が多い) |
いかがでしたか? もちろん、複数のタイプが混ざっていることもあります。
一番当てはまる項目が多いものが、その子の「メインの入力端子」です。ここからは、その端子にぴったりの「書かない暗記術」をお伝えします。
【タイプ別】今日から実践できる「書かない」魔法の暗記術
「書かないでどうやって覚えるの?」と不安になる必要はありません。脳の特性を利用した、より効率的で強力なメソッドがあります。
視覚優位の子には:「じっと見る」&「色分け分解」
カメラアイを持つこのタイプには、文字を「絵」として捉えさせることが最強の近道です。
- 10秒凝視法: 覚えたい漢字の正しい手本を10秒間、じっと見つめさせます。「ここの線は少し長いね」「ここは突き出ないね」と、形の特徴を言葉にしながら見るとより効果的です。
- パシャリと撮影: 目を閉じさせ、「まぶたの裏にその漢字が見える?」と聞きます。見えたら「パシャリ!」と言って脳内で写真を撮ります。
- 色分け分解: 画数の多い漢字は、「へん」は青、「つくり」は赤、のように色ペンで塗り分けます。これで複雑な模様ではなく、「意味のあるパーツの組み合わせ」として視覚的に保存されます。
聴覚・言語優位の子には:「ミチムラ式(口唱法)」
言葉や音の処理が得意なこのタイプには、「ミチムラ式漢字学習法」としても知られる「口唱法(こうしょうほう)」が劇的に効きます。
これは、漢字の書き順を「上から、横棒…」ではなく、意味のある「部品」と「言葉」で唱える方法です。
例えば「善」という漢字なら、「羊(ひつじ)が1匹、口(くち)2つ」とリズムよく唱えます。
聴覚・言語優位の子にとって、論理的な言葉の組み合わせである「口唱法」は、脳の言語野をフル活用できる相性抜群のメソッドです。
手は動かさず、口と耳を使って覚えるので、疲労感もありません。
全タイプ共通の最強メソッド:「空書き(エア・ライティング)」
そして、どのタイプのお子さんにもおすすめしたいのが、「空書き(そらがき)」です。
やり方は簡単。指先を使って、空中に大きく文字を書くだけです。
「え、それだけ?」と思われるかもしれませんが、これには強力な脳科学的根拠があります。
空書きと記憶定着には、科学的に証明された密接な関係があります。
紙との摩擦抵抗がないためストレスがなく、大きく腕を動かすことで脳の「運動野」が活性化され、視覚イメージとの連携が強化されるのです。
机も鉛筆もいらないので、お風呂に入っている時や、車での移動中にも遊び感覚で実践できます。
✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス
【結論】: 宿題の前に、まず5分間だけ「空書き」タイムを作ってみてください。
なぜなら、いきなり鉛筆を持って細かい字を書こうとすると、脳が「作業モード」に入ってしまい、記憶のスイッチが切れてしまうことが多いからです。
「空書きで形を覚えてから、確認のために1回だけノートに書く」。この順序に変えるだけで、学習効率は劇的に上がります。
「学校の宿題はどうする?」親が知っておくべき対処法
ここまで読んで、「家ではそれで良くても、学校の宿題は書き取りドリルが出るんです…」と不安になったお母さん。その通りです。ここが一番の悩みどころですよね。
しかし、ここでも諦める必要はありません。お子さんのために、親ができる「環境調整」があります。
1. 家庭内ルールで「ハードル」を下げる
まず、ご家庭内で「宿題のゴール」を再定義しましょう。先生に提出するために書くのではなく、「覚えるため」にやるはずです。
もしお子さんが苦しんでいるなら、「薄く書かれた文字をなぞるだけ」や「指でなぞるだけ」でもOKにしてあげてください。
それで漢字テストの点数が取れれば、自信になります。親御さんが「今日はこれで十分頑張った!」と認めてあげることが、何よりの救いになります。
2. 先生への相談は「サボり」ではなく「特性」として伝える
どうしても宿題の量が負担な場合は、連絡帳や面談で先生に相談することをおすすめします。
その際、「宿題を減らしてください」とだけ言うと「甘やかし」と捉えられかねません。次のように伝えてみてください。
「うちの子は視覚優位の傾向があり、書いて覚えるよりも、見て覚える方が効果が出るようです。
家では『空書き』や『口唱法』でしっかり覚えますので、書き取りの回数を調整させていただけないでしょうか? 次のテストで結果を出せるようにサポートします。」
このように論理的に、かつ「成績を上げたい」という前向きな意欲を見せれば、多くの先生は理解を示してくれます。
これは「わがまま」ではなく、教育現場で認められつつある「合理的配慮」の第一歩です。
3. プロの力を借りる
もし、学校との交渉が難しかったり、家庭だけでのサポートに限界を感じたりした場合は、私たちのような専門家を頼ってください。
WAMのオンライン家庭教師は、お子さんの認知特性に合わせたカリキュラムを組み、学校の授業進度とも連携しながら、ベストな学習環境を作ります。
まとめ:「書けない」は「才能」の裏返し。自信を取り戻そう
「書いても覚えられない」と泣いていたお子さんは、決して能力が低いわけではありません。
むしろ、一瞬で映像を記憶したり、音の響きに敏感だったりと、他の子にはない高感度なセンサー(才能)を持っている証拠なのです。
今まで苦労していたのは、その高性能なセンサーに合わない入力方法を強いられていたからに過ぎません。
今夜は、ドリルを閉じて、お子さんの隣で一緒に指を空に向けてみませんか?
「魔法の眼鏡」を見つけたお子さんが、「あ、これなら覚えられる!」と笑顔を見せてくれる瞬間。それが、成績アップへの本当のスタートラインです。
「うちの子のタイプをもっと詳しく知りたい」
「プロに学習計画を立ててほしい」
そう思われた方は、ぜひ一度、WAMの無料学習相談にお越しください。オンラインで、経験豊富な教育プランナーが、お子さんの「脳の個性」に合わせた最短ルートをご提案します。






