あなたは「ストレス」と聞いて、どんなことを思い浮かべますか?

テスト勉強が間に合わなくてイライラ。

友だちから返信がなくてソワソワ。

先生に怒られてモヤモヤ…。

そんな場面が思い浮かんだりしたかもしれませんね。

 

この「イライラ・ソワソワ・モヤモヤ」というイヤーな感じ。

これはストレス反応の一種で、あなたがあなた自身に送っているサインでもあるんです。

では、いったい何のサインなのでしょうか?

そのサインの意味を理解できれば、あなたは「ストレス」を自分の味方につけ、より自分らしく生きることができるようになるでしょう。

 

ストレスとは?

 

ストレスとは、簡単に言うと、

外部から刺激を受けた時の緊張状態のことを指します。

 

たとえば、

「キキーーーー!!!」っと、

目の前にいきなり車がとびだしてきたら、あなたはどうしますか?

何も考えず、すぐさま車を避けようとしますよね。

これは、あらゆる動物に備わった

「闘争・暴走反応」と呼ばれる生存本能のひとつです。

そして、この時

「命が危ない!」というサインを出して、あなたを死の危機から

守ろうとする反応が「ストレス」なのです。

 

とびだしてきた車を目にしたあなたの体内では、次のようなことが起こっています。

 

外部からの刺激(車)を視覚でとらえる

運動神経に刺激(車にぶつかりそう!)が伝達される

心拍数、血圧、血糖値などが上がる

筋肉に大量の血液を送られる

体を緊張状態にし、瞬時に動けるようにする

「戦う」か「逃げる」かのどちらかを判断し素早く行動できるようにする

 

ストレスは、生きるために必要な能力

 

 

ライオンに睨まれたシマウマの体内でも同様の反応が起こります。

即行動しなければ、シマウマは「戦う」ことも「逃げる」こともできず、ライオンの餌食になってしまいます。

つまり、状況や環境の変化に素早く対応し、今を生き抜くための能力として「ストレス」反応があるのです。

 

「人間的な脳」が現代社会のストレスを生む

 

長い歴史を経て、人は社会的動物として、

「本能」とは別に「理性」を司る脳を発達させてきました。

「本能的な脳」は、

目→視覚皮質→運動皮質という流れで反応するのに対して、

「理性的な脳」は

目→視覚皮質→前頭前野→運動皮質という流れで反応します。

人間はこの前頭前野の働きによって、

行動を起こす前に考えたり、計画を立てることができるようになりました。

社会や他者とのつながりを保ちながら生活する私たちは、

身のまわりから常にたくさんの刺激を受ける環境にいます。

その結果、脳が常に刺激され、慢性的なストレスにさらされるようになりました。

元来、生命危機を回避するために備わった瞬発能力が「ストレス」であるため、

現代の慢性的なストレスには適応しきれないのです。

 

 

ストレッサーの種類

ストレッサーとは、心や体にかかる外部からの刺激を指します。

大きくわけると下記の4種類があります。

 

  1. 物理的ストレッサー(温度や光、音など物理的な環境刺激など)
  2. 化学的ストレッサー(公害物質、薬物、食品添加物など)
  3. 心理・社会的ストレッサー(人間関係や仕事上の問題、家庭の問題など)
  4. 生物学的ストレッサー(睡眠不足、疲労、花粉、細菌・ウイルス感染など)

 

私たちが「ストレス」としてイメージしやすいのは「心理的ストレッサー」でしょう。

冒頭で触れた「イライラ・ソワソワ・モヤモヤ」といった感情を起こさせているのは、

この「心理的ストレッサー」です。

 

 

ストレス反応の種類

ストレッサーによって引き起こされるストレス反応は、

心理面、身体面、行動面の3つがあります。

 

心理面でのストレス反応(イライラ、不安、抑うつなど)

身体面でのストレス反応(体のふしぶしの痛み、頭痛、肩こり、腰痛など)

行動面でのストレス反応(暴飲暴食の増加、仕事でのミスや事故、不登校など)

 

こうした症状がストレスに起因するということに、

本人が気づかない場合が多々あります。

気づかず症状を悪化させてしまうと、うつ病や過労死などの深刻なケースに

至ることもあるため、ほんの少しの変化に自覚的であることが大切になります。

 

 

ストレスに関わる三大伝達物質

ストレスに大きく関わる3つの神経伝達物質があります。

 

ドーパミン

快楽を司る神経伝達物質です。

向上心やモチベーション、記憶や学習能力、運動機能に関与します。

分泌が不足すると、物事への関心が薄れ、無気力状態に陥る可能性があります。

ノルアドレナリン

覚醒を司る神経伝達物質です。

ストレスに反応して怒りや不安・恐怖などの感情を起こします。

「ストレスホルモン」と呼ばれるのはこのホルモンです。

セロトニン

精神を安定させる役割を担っています。

ノルアドレナリンやドーパミンの分泌をコントロールします。

 

何か運動したわけではないのにグッタリしているという時は、これら物質の

バランスが不安定になっている場合があります。

あなたのストレス状態を理解する際、知識として頭のスミに置いておくとよいでしょう。

 

 

ストレスが溜まると…

現代人は慢性的なストレスにさらされていますが、それが行き過ぎてしまうとどうなってしまうのでしょうか。

 

ストレスが溜まりやすい人の特徴

ストレスを感じやすい人の特徴は大きく2つであると言われています。

 

せっかちタイプ

「仕事が早い」「時間を厳格に守る」などいい面もありますが、他人に対して厳しい一面があります。

落ち着いた人間関係を気づきにくく、時に虚無感を覚えることもあります。

そのようなストレスが心身の不調を招くことは少なくありません。

 

いい人タイプ

いわゆる「いい人」は、本音を他人にいうことなく、自分で抱え込んでしまう傾向があります。

我慢を続けていても、ある日突然体調を崩してしまう可能性が高いです。

 

ストレスが溜まるとどうなる?

ストレスが溜まると様々な身体的・精神的不調を招いてしまいます。

今回は代表的な症状をご紹介します。

 

自律神経失調症

自律神経の交感神経と副交感神経が心身の健康を守る働きをしていますが、ストレスを感じることでバランスが乱れてしまい、だるさや頭痛、憂うつ感、イライラ感などが生じるといわれています。

 

一見悪いところが見つからない厄介な病気です。

 

過度なストレスによって、脳への神経伝達物質が正常に伝達することが困難となることで引き起こされます。

憂うつ感や焦燥感、頭痛や注意力が低下するなどの症状が現れるといわれています。

 

胃腸炎

ストレスによって身体的も不調が起こってしまいます。

胃腸炎はその1つで、ストレスが原因で胃酸が過剰分泌し、胃の免疫力が低下してしまいます。

免疫力が低下した胃はウイルスなどに感染しやすく、結果的に急性胃腸炎を引き起こします。

 

蕁麻疹

蕁麻疹も身体的不調の1つです。

ストレスが加わることで、自律神経やホルモンが乱れる影響で発症すると言われています。

通常の蕁麻疹ならすぐに治ることもありますが、ストレス性のものは、なかなか治らず繰り返すことが多いと言われています。

 

 

ストレスに気づくためのSTEP5

 

 

適度なストレスとうまくつきあっていくコツのひとつは、

「自分のストレスに気づく」ことです。

うまく付き合えると、「自分には難しいかも」と思う志望校合格へ向けて勉強しようとする時や、

大会を目指して厳しい部活の練習を頑張ろうとする時などに、ストレスの力をプラスに活用できるようになります。

 

下記5つのステップで、自分のストレスに気づく習慣を身につけ、

ストレスをあなたの味方につけましょう!

 

 

STEP1.自分を遠くから見てみる

人は、頭の中で考えたことを現実だと思い込んでしまうくせがあります。

だからこそ、心の中がモヤモヤとしている時ほど、

自分自身と少し距離を置いて、自分を客観視してみましょう。

視野を広げることで、自然と心も気持ちよくなります。

 

STEP2.「自分がどう感じているか」を感じてみる

自分自身の感じていることについて自覚的になれると、

過度にストレスを受ける前に対処することができます。

無理に言葉にしようとせずに、

目や耳や鼻など、五感で感じることにも意識を向けてみましょう。

 

STEP3.自分が感じたことを言葉にしてみる

 

心のなかでモヤっとした気持ちを言葉にしてみると、

思いのほか気持ちが楽になったという経験があるのではないでしょうか。

これは、心理学用語で「感情のラベリング」と呼ばれています。

自分自身の感じていることを言語化することで、

ストレスを緩和する効果があると言われています。

また、具体的な言語化を通じて、恐怖心や攻撃性を司る

脳内の「扁桃体」の働きを抑える効果もあると言われています。

 

STEP4.言葉にしたことを書いてみる

 

「書く」ということが、さらにあなたに客観的な視点をもたらします。

自分に起きたことや、その時の気持ちを日々書き重ねていくことで、

怒りやイライラの原因の傾向が徐々にわかるようになります。

「書くことに慣れていない、めんどう」と思ったら、

「とりあえず1行だけ!」と決めて、毎日「書く」ことを習慣化させてしまうとラクになります。

 

また、自分の感じたことを母語以外(英語、仏語、中国語、ドイツ語、あなたが少しでも興味がわく言語がよいでしょう)で書くと、日本語で書く時には気づかなかった感情に気づくこともあります。

言葉の性質や構造の違いで、新しいあなたを表現できるかもしれません。

 

STEP5. Myストレス傾向リストを書く

 

 

STEP4で「自分自身の感じていることを言葉にして書き出す」

ということを習慣化できたら、今度は書いたものを読み返してみましょう。

すると、自分がどんな時にどんな感情になるのか、どんな行動を取りやすいのかなど、

あなたがストレスを感じやすいときの傾向などが見えてきます。

その傾向をもとに、あなたオリジナルのストレス対応リストを作れば、

早い段階からストレスに対処できるようになります。

 

 

日々の中で簡単にできるストレス解消

ふわぁんと浮かぶシャボン玉をボ~っとながめる。

じつはそれもストレス解消のひとつになったりします。

ここから先は、日常に簡単に取り入れられるストレス解消法をご紹介します。

 

睡眠

 

 

睡眠は、最強のストレス解消法と言っていいほど、人の心と体の回復をうながしてくれます。

 

ストレス解消のための快眠ポイントは

・眠る90分前にお風呂に入って、体の芯を温める。

・眠る30分前に読書をして、眠りに就きやすい副交感神経に脳を切り替える。

・寝室の照明は少し暗めにし、静かな環境に整える。

・枕の高さなど、自分に合ったものを使う

などです。

 

逆に

・眠る前に飲食やカフェインを摂る

・パソコンやスマホのブルーライト

などは避けるようにしましょう。

 

有酸素運動

 

 

運動をしているとなんだか爽快な気持ちになりますよね。

それは運動中に脳内で、幸福ホルモンと呼ばれる「セロトニン」が

分泌されていることが理由のひとつでもあります。

「セロトニン」分泌を促す運動方法が「有酸素運動」。

有酸素運動とは、筋肉を収縮させる際のエネルギーに、酸素を使う運動のこと。

・ウォーキング

・水泳

・サイクリングなどが挙げられます。

 

ほどよい体の疲労感は、心地よい睡眠も促します。

 

 

深呼吸

 

なかなか運動する時間が取れないというときは、深呼吸がおすすめ。

すっきりできる深呼吸のコツは、

 

・楽な姿勢で座る

・軽く目をとじる

・息を吐き切る

・拍かけて鼻から息を吸う

・拍とめる

・10拍かけて口から息を吐く

 

また、カッとなった時に怒りの感情を鎮めるのにも有効。

人の怒りというのは6秒程度で落ち着き始めるそう。

その6秒間、深呼吸に意識を向けて、自分を見失わないようにしましょう。

 

 

ツボ押し

 

 

勉強の合間や、ちょっとした待ち時間にできるストレス解消法がツボ押し。

 

・神門(しんもん)

手首の付け根、小指側にあり、イライラを鎮めてくれるツボです。

不安感が強いときにもおすすめ。

 

・合谷(ごうこく)

手の親指と人差し指の間くらいにあります。

 

ツボ押しのポイントは、押しの強さをハンコ押し程度にすることです。

力の入れすぎには注意しましょう。

 

セロトニン

ストレスがかかると、体内のビタミンCが大量に消費されてしまいます。

ストレスが溜まってきたと感じたら、意識的にビタミンCが豊富な野菜や果物を食べ、

心と体をケアしてあげましょう。

 

ビタミンCはもちろん、脳機能を維持する役割を持つカリウムを豊富に含むバナナは気持ちを落ち着かせる「セロトニン」も含むため、”強力なストレスバスター”と呼ばれることもあります。

 

そのほかセロトニン摂取におすすめの食品はこちら。

咀嚼することで精神の安定を促す「セロトニン」の分泌がうながされるので、

ガムをかむこともストレス解消に有効です。

グレープフルーツ、オレンジ、レモン、ライムなどの香りは

不安を和らげる効果があるとされているので、

柑橘系ガムがより効果的かもしれません。

 

お守りことばを唱える

 

 

自分に向かって、はげましの言葉をかけることも、ストレス解消には有効です。

最初は少し恥ずかしいかもしれませんが、次のような言葉を口にしてみましょう。

 

「今日はなんていい日」

「今日の私は素晴らしい!」

「これでいいのだ」

「チャンスはピンチの顔をしてやってくる」

「あなたならば大丈夫」

 

「何も考えない、何もしない」をしてみる

 

 

身体の五感に意識を集中させて、

「今」を心ゆくまで味わうのもストレス解消方法のひとつ。

何もしない、何も考えない、という時間も大切です。

たとえば、下のような写真をただ何も考えずにながめるだけでも

フッと肩の力が抜けていく感覚を味わうことができるはずです。

 

避けたいストレス解消法

暴飲暴食

ストレスが溜まると無性に「食べたい」という欲求が沸き起こってくることがあります。

そんな時、ついつい「ドカ食い」してしまいがちですが、これはかえってストレスを増やしてしまうかもしれません。

 

食べている最中は楽しいかもしれませんが、食事後は後悔が生じてしまうものです。

なるべく行わないようにしましょう。

 

ショッピング

これは意外かもしれませんが、ショッピングはストレス解消としては不適切です。

 

「あれがほしい」「これがほしい」と物欲を膨らませるまではいいのですが、「買って後悔した」という事態がストレスになります。

つまり、期待感を膨らませた後に裏切られることが体にとって良くないということです。

 

テレビ・スマホ

 

 

ストレスが解消されるのは、交感神経が非活発的になり、副交感神経が優位になるときです。

交感神経を活発化させてしまう「ブルーライト」を放つテレビやスマホは、ストレス解消には不向きでしょう。

 

また、SNSは特に注意です。

他人のキラキラした瞬間が多く掲載されているSNSでは、「自分だけが不幸」という錯覚に陥ってしまいがちです。

 

ストレスが溜まっていると感じたら、思い切ってテレビやスマホの電源を切ってみてはいかがでしょうか。

 

 

まとめ

 

ストレスの研究者であるセリエ博士曰く、

ストレスは人生のスパイスのようなもの

だそうです。

つまり、ストレスを抱えていない人間はいないということです。

 

ストレスはマイナスのイメージを持たれてしまいがちですが、関わり方によっては私たちにとって大きな武器となります。

「挑戦しよう」「頑張ろう」と思える環境には必ずストレスが存在します。

ストレスがあるからこそ、私たちは挑戦し、成功し、豊かな人生を歩むことができるのではないでしょうか。

 

無くなることのないストレスと上手く付き合い、充実した日々を過ごせるようにしましょう。

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