「魔女なおばあちゃんになりたい。」 

 

これは、女優の宮沢りえさんが雑誌のインタビューで「どんな女性を目指しますか」という質問に答えた時の発言です 

 

 

「魔女な」という表現をどう感じましたか?

すんなりと納得した人もいるでしょうし、違和感を持った人もいるでしょう。

現在のところは、「魔女な」という表現は、間違った言葉遣いだとされます。 

「魔女」という言葉が、ものの名前を表す語、すなわち、「名詞」という認識が一般的であり、「人や物事の性質・状態を表す語」という感覚がないからです。 

 

「元気」という言葉と比べてみると分かりやすいかもしれません。

「元気が私の自慢です。」といえるように、主語になるという意味で「名詞」ととらえることも可能ですが、「元気なおばあちゃん」という表現に違和感を持たないように、「元気」は「人や物事の性質・状態を表す語」と、一般的にはとらえられています。

「元気だ」という形容動詞はありますが、「魔女だ」という形容動詞はないというのが、現状です

「神秘的で、謎めいていて、かつ永遠の生命性を感じさせる状態」といった語感を、多くの人が「魔女」という語に抱くようになれば、「魔女な」は正しい言葉遣いということになるでしょう。 

 

 

もう一つ、同じような例を。

 

「ピーマンを、私は好きくない。」です。 

 

「好きくない」も間違った言葉遣いです。

正しくは、「好きでない」です。 

 

では、なぜ、このような間違った言い方をしてしまうのでしょうか。 

それは形容詞の連用形+「ない」という表現に引きずられた結果だと考えられます。

「広くない、暗くない、大きくない」と混同して、形容動詞である「好きだ」を、形容詞的に活用させてしまったのです。

形容詞と形容動詞がともに「人や物事の性質・状態を表す語」であるために起こる誤用といえます。 

もちろん、「好きくない」も多くの人々によってその言い回しが使われ、それが一般化すると間違いではなくなります 

 

言葉というものは、生き物です。

刻々と変化していきます。

今、間違った言葉遣いとされているものも、それが一般化すれば間違いではなくなります。

しかし、現時点での正しい言葉遣するためには、今、現在はどうとらえるのが一般的なのかを理解ておくこ大切です。

特に受験における国語の文法問題を解くには

一般的な捉え=スタンダード

を知っておかなくてはなりません 

 

今回は、上記の例のように誤用も多い、「形容詞形容動詞」のスタンダードについてお話しします。 

 

 

形容詞とは 

人や物事の性質・状態(どんなだ)を表す語であり、活用があり、単独で述語になることができ、言い切りの形(終止形)が「―い」で終わる語、それを国文法では「形容詞」と名付けています。 

具体的には、「汚い まずい 新しい おいしい 厚い 暑い 熱い 冷たい、暖かい、美しい」といった語です。 

 

日本語と英語の形容詞の違い

「国文法では」とわざわざことわりをいれたのは、「英文法」の「形容詞」とは別物であるからです。

正確な定義ではありませんが、おおざっぱな言い方として、英文法では名詞を修飾する(名詞にかかる)語「形容詞」と呼び、動詞を修飾する(動詞にかかる)語を「副詞」と呼びます。

この英文法の形容詞副詞国文法の「形容詞」とをしっかり区別して理解しておかないと混乱を招いてしまいます 

[ run  fast ]の[ fast ]は、英文法では「副詞」ですが、「速く走る」の「速く」は、国文法では「速い」という「形容詞」の「連用形」です。 

 

 形容詞の活用

「形容詞」は活用がある語です。

活用があるとは、下に続く言葉によって、語尾の形が変わるということです。 

 

例えば、「まずい」という形容詞が、未然形「まずかろ―う」・連用形「まずかっ―た、まずく―ない」・終止形「まずい」・連体形「まずい―時」・仮定形「まずけれ―ばと、「う・た・ない・時・ば」という下に続く言葉によって語尾変化を起こすととらえます。

そして、活用しても変化しない部分「まず」を語幹、活用して変化する部分を活用語尾と呼びます。 

形容詞の活用語尾は「かろ」「かっ、く」「い」「い」「けれ」の1種類、未然形・連用形・終止形・連体形・仮定形で活用します。

命令形はありません。

性質や状態を表す語ですので、仮に命令するとなると「おいしく―なれ」や「おいしく―あれ」というように、形容詞の連用形+動詞の命令形の形をとります。 

 

 

形容動詞とは 

英文法にはなく、国文法独自の品詞「形容動詞」です。

人や事物の性質・状態(どんなだ)を表す語であり、活用があり、単独で述語になるという点は、まったく「形容詞」と同じです。

違いは、言い切りの形(終止形)が「―だ」で終わる語を「形容動詞」と名付けています。 

 

具体的には、「上品だ 確かだ 静かだ 満足だ 専門的だ のどかだ 幸せだ」といった語です。そして、「幸せだ」という形容動詞が、未然形「幸せだろ―う」、連用形「幸せだっ―た 幸せで―ない 幸せに―なる」、終止形「幸せだ」、連体形「幸せな―時」仮定形「幸せなら―ば」と活用します。 

形容動詞の活用語尾は、「だろ」「だっ、で、に」「だ」「な」「なら」の1種類で、形容詞と同様に命令形はありません。 

 

「~な」型の連帯詞に注意!

形容動詞において、注意しておかなくてはならないのが、「~な」型の連体詞との区別です。 

「静かな夜」と「大きな格差」の「静かな」と「大きな」の違いです

ともに名詞を修飾しているということでは共通しています。

しかし「静かな」は「静かだ・静かにする」といえるのに対して、「大きな」は「大きだ・大きにする」とはいえません。

また、「大きい」という形容詞と「大きな」は語源的には共通するものですが、形容詞の連体形活用語尾に「な」はありません。「まずな味」、「新しな服」とはいいません。 

よって、「大きな、小さな、おかしな、いろんな」の4語は、国文法上では、名詞を修飾する、活用のない語、「連体詞」と分類されます。 

 

 

形容詞と形容動詞の見分け方 

 

 

外国人向けの日本語文法では、「形容動詞」という品詞はありません。

国文法の形容詞は「イ形容詞」、国文法の形容動詞は「ナ形容詞」として、ともに形容詞として扱われています。

このことからも、この両者が非常に似た性質の語であることがわかります。

そして、似た性質であるため、冒頭で述べたように誤用も多くなりいっそうその違いがわかりにくくなっています。 

ここでは形容詞と形容動詞の見分け方についてお話しします 

 

言い切りの形を意識する

形容詞の言い切りの形(終止形)は「―い」、形容動詞の言い切りの形(終止形)は「―だ」です。 

この違いを意識することで、形容詞と形容動詞を見分けることができます。 

 

例えば、「暖かい日」と「暖かな日」の違いです。

「暖かい」は終止形が「暖かい」である形容詞、「暖かな」は終止形が「暖かだ」である形容動詞です。 

 

もう1例。「冬になっだんだんと寒くなる。」と「彼は薄着なので、寒そうだ。」 

「寒く」は、終止形が「寒い」であるので、形容詞。

「寒そうだ」は終止形が「寒そうだ」なので形容動詞です。 

 

では、次の例はどうでしょうか。 

「彼女はきれい。」と「彼女はうつくしい。」 

例文の両方とも、意味内容が似ており、かつ「い」で終わっているので、ともに形容詞であると判断がちです。 

ここで、もう一つの見分け方を紹介します。 

 

「~な」の形にしてみる

形容動詞の連体形が「~な」であるのに対して、形容詞の連体形には「~な」の形はありません。 

「~な」の形になったら形容動詞、「~な」にならなかったら形容詞と判断します。 

 

「うつくしい」は形容詞です。

そして、「きれい」は「きれいだ」という形容動詞の語幹です。

「彼女はきれい。」は、文末の「だ」を省略した省略法を用いた文だと判断します。

「その料理は嫌い。」や「私は元気。」も同様です。「嫌いだ」・「元気だ」という形容動詞の語幹用法です。 

 

なお、ここで注意しておかなくてはならないのが「~な」の形の連体詞です。「大きな、小さな、おかしな、いろんな」の4語は、「大きだ、小さだ、おかしだ、いろんだ」という言い方をしないので、活用のない連体詞だと判断します。 

 

 

まとめ 

形容詞と形容動詞のスタンダードについてみてきました。 

まとめると、人や事物の性質・状態を表す語であるという点で共通し、形容詞が「―い」で終わる語、形容動詞が―だで終わる語です。

形容詞が「かろ かっ く い い けれ」と活用し、形容動詞「だろ だっ で に だ な ならと活用します。 

 

文法事項を覚えるというのは、すごく細かくて面倒なことです。

しかし、文法事項を覚え、文法について思考することは、第一には、今、現在の正しい言葉遣いを知ることであり、自身の品位を高めることにつながります。

そして、第二には、一つ一つの言葉を吟味するという姿勢が言葉に対する感受性を鋭くしてくれます。

さらに、第三には、分析的なものの見方・考え方を育み、ひいては文章読解力、表現力を強化することになります。 

 

文法の学習は、地道で手間がかかりますが、自身の人間性を高めることになるという意識で取り組んでほしいと思います。 

 

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