農学部とは?どのようなことを学ぶのか・主な就職先は?
みなさんは「農学部」についてどんなイメージを持っていますか?
農業について学ぶという漠然としたイメージはあるかもしれませんが、詳しくは分からないという人が多いと思います。
そこで今回は、「農学」という学問について、農学部に向いている人、農学部の学びがつながる職業などをご紹介します。
Contents
農学部とは?
概要
そもそも「農学」とは、農作物などの栽培・生産技術だけでなく、農業生産における社会的な関わり、また農業の経営や政策などを通じて、人類と自然の共生について研究する学問です。
現在、私達が暮らす地球の環境は目まぐるしく変化しており、農学部では、それに伴い生じる課題に対して、生物学・化学・物理学の視点を絡めて、農業に関する技術や理論の研究に取り組んでいます。
農学部は理系の学部ですが、同じく理系学部で区別がつきづらいものに、理学部と工学部があります。
違いとしては、理学部では教科書や図鑑に載るような研究をするのに対して、農学部では技術を応用したり開発したりなどの実学的な研究を行っています。
研究成果を社会に還元するという目的を持っている点では、少し工学部と似ているとも言えます。
では、具体的に農学部ではどのようなことを学ぶのか説明します。下記の通り、大きく4つの区分に分けることができます。
学ぶこと
栽培技術
一般的に、農学部のイメージとしてまず浮かびやすいのが、この栽培技術の開発だと思います。農作物の栽培における学術的な理解や実践を通して、品種の改良や害虫対策をはじめとした、より良い栽培方法を学び、研究していきます。
農業経営・農業政策
農業を事業として継続させるための「農業経営」や行政による農業支援の在り方を考える「農業政策」は、社会と農業の関わりを知るうえで欠かせない事柄です。
資源生物科学
資源生物科学では、食料としての生物と環境のつながりを考え、研究していきます。
応用生命科学
食品・農業・化学工業・医療などにおける問題をバイオ技術(遺伝子組換えなど)によって解決を目指す分野が応用生命科学です。
このように農作物の栽培などの農業に関する基礎知識から、バイオ技術の開発といった先進的な研究まで、農業における幅広い分野を学べることが農学部の魅力の1つです。また、理系の学部ではありますが、社会や倫理との関係を専門に考える科目や実際の現場でのフィールドワーク、実験室での実験を中心に研究する人もいて、カリキュラムが多岐にわたることも特徴です。
農学部に向いているのはこんな人
ここまで、農学部で学べることを紹介しましたが、実際どんな人が農学部に向いているのでしょうか?
農学部に向いている人の特徴は大まかに以下の通りです。
①食を通して社会に貢献したい人
②自然が好きな人
③実験もフィールド実習もしたい人
④理系に行きたいけど、男性だらけの環境が苦手な女性
農学部ほど「食」をメインに扱っている学部はなく、様々な観点から食について考えています。
具体的には、以下のような例が挙げられます。
・作物や野菜の栽培を通して食に貢献
・乳製品や家畜を通して食に貢献
・微生物の発酵や農薬の開発で食に貢献
・栄養学や健康を通して食に貢献
このように、農学部では食に対して様々なアプローチを行っています。
中でも、自然が好きな人に農学部はとてもおすすめです。その理由に研究対象が自然であり、フィールドでの実習があることが挙げられます。実習では、森林の中を歩いて林業について学んだり、農場に行って農作業をしたり、家畜のお世話をしたりします。
フィールドでの実習だけでなく、実験室での実験も行っています。フィールドで採取したサンプルを実験室で解析するといった研究方式もあり、農学部の魅力の1つでもあります。ただし、化学系を専攻する場合、そこまでフィールドに出る機会はないので、自然が好きで実習メインの研究をしたいという方は、生物生産系を専攻することをおすすめします。
さらに、理系というと男性が多いという印象があるかもしれません。
しかし、農学部は理系の中でも女性が多い学部として知られています。
女性が多い理由としては、
・食品や化粧品業界への就職に強い
・数学や物理をあまり使わない
・生物や化学に興味のある女性が多い
といったことが考えられます。
また、座学よりも手や足を動かして考えるのが好きという人も、農学部に向いていると言えます。
農学部の主な進路・就職先
では、農学部に入学した人は、実際にどのような仕事を目指せるのでしょうか?
ここでは、いくつかの具体例を紹介します。
まず、卒業後の進路の例として、米や野菜、果物などを生産する「農業・農家」や農作物の生産技術向上の研究・指導を行う「農業研究者」などが挙げられます。これらは農学の専門的知識を活かし、農作物の栽培や収穫、品質検査、生産技術の開発などを通して、実際に農作物を作り出すことができる職業です。また、食品や化粧品、製薬会社など製造業における「研究員・技術者」といった、製造や開発に関わる職業も進路の例として挙げられます。ほかにも農協をはじめとした農業団体に所属し、農家を支える立場として経営や栽培方法の指導や、農業政策を立案したりする道もあります。公務員になる人もいるため、卒業後、様々な道があるということが分かります。
このように、4年で大学を卒業し就職する道を選ぶ人もいますが、専門性が高いこともあり、大学院に進み研究者としての人生を歩む人も多くいます。特に国公立大学の農学部生に顕著に見られる傾向で、全体の6~9割を占めます。同じ大学に残って自分の研究を発展させる人や違う大学に進学して新たな環境で研究を行う人もいます。
学部卒業の時点では、研究職よりも一般職に就く人の方が多いため、企業で研究・開発をしたいと考えている人は大学院まで進むと良いかもしれません。
農学部で学ぶことができる分野は多岐にわたるため、農学の学びを生かせる職業は様々です。また、農学部において取得できる資格には、就職先で有利になるものも多くあるので、就職したい職種が決まっているのであれば、そこで役に立つ資格を積極的に取得しておくと良いと思います。
農学部のある主な大学
農学部がある大学は割と多いことで知られています。
国公立大学では、北海道大学、東北大学、東京大学、京都大学、神戸大学、九州大学。
私立大学では、明治大学、東京農業大学、東海大学、近畿大学などが挙げられます。
ここで挙げた大学は、農学部がある大学のほんの一例です。また、農学部という名前ではないけれど、実際の研究は農学部と似たようなことをしている学部を持つ大学もあります。
また、農学部のある大学は多いため、進路を決める際にどの大学が良いのか悩むかもしれません。
その際は、まず、自分が農学部の中でどのような分野を学びたいのか明確にすると良いと思います。化学系、生物生産系、農業経済系など学問の幅が広いので、それぞれの大学でどの分野に力を入れているのか調べてみるのもおすすめです。学びたい分野が分からないという人は、将来就きたい職業を考えて、逆算してどの分野に進めば良いのか考えてみてください。また、自然が好きでフィールド実習を通して研究を進めたいと考えている人は、大学の立地も考慮すると良いと思います。
入学後に、自分のやりたかったことができなかったという後悔をしないように、しっかりと調べたうえで進路を決めてくださいね。
まとめ
ここまで、農学部について説明してきましたが、興味の持てる分野はありましたか?
農学部は、農作業だけをしているわけではなく、人々の生活に役立つことを幅広く研究しています。この記事を読んで農学部のイメージが少し広がったのではないでしょうか。少しでも農学部に興味があったら、より詳しく調べてみてくださいね。